最速で世界クラスのスキルを身に着ける方法
2021/04/12
フロリダ州立大学で心理学を研究しているアンダース・エリクソン教授は、非常に具体的でよく考えられた練習方法を用いれば、「非常に高いレベルの専門性を少ない時間で身につけられる」と述べています。
彼の論文は、ベストセラー『Outliers』において「1万時間の法則」という内容でゆがめられて伝えられてきました。
天才たちに共通するのは、その分野における練習時間の総量であると考えたせいでしょう。天才になるためには、総練習時間が1万時間に到達しなければならないというのです。
1日90分であれば、20年かかるという計算です。1万時間の法則はまたたく間に注目を集めました。現在では、人生のどの段階であろうと、スキルを習得したい人の決まり文句になっています。
実際、1万時間は、エリートたちが練習に費やした時間の平均にすぎません。25000時間以上練習した人がいれば、1万時間よりもずっと少ない練習時間でその道を究めた人もいました。
最近では見直された「メタ学習」が脚光を浴びるようになっています。言い換えると、学習に関する学習です。
脳や身体が学習する仕組みを理解することで、もっと効率的な学習方法を生み出せるという考え方です。
さらに、科学や心理学の研究により、新しい学習法が続々と示されています。
そのような洗練された学習法を用いることで、これまで必要とされていた時間よりもずっと短時間でスキルを身につけることができるはずです。
フィードバックの繰り返しを作りだす
フィードバックのループを作ることで、自分の間違いを正確に把握し、学習ルーチンの改善点を特定しやすくなります。英国のブルネル大学の論文では、次のように説明しています。
希望する目的を達成するために必要な情報を入手することとは、すなわち短時間でのスキル習得そのものを意味します。
つまり、目標により早く到達するために何を変えるべきかを把握できればいいのです。
投資では、小さく早く多く負けることを推奨してきました。その結果をもとに見直すことでイチ早く現在に対応することができる。
特に競馬の変化スピードは人間社会の数倍早いため、このフィードバックを生かすことが利益に直結すると考えるべきでしょう。
結果が目に見えるスキルの場合、過去のデータを収集するだけで、フィードバックになります。そのデータを使って、将来のアプローチを調節すればいいのです。
そうでないスキルの場合、ほかの方法でフィードバックを得なければなりません。
たとえば批評グループのように、お互いを評価しあうことで切磋琢磨するマスターマインドなどがあります。
どんな分野にも、同様のコミュニティやフォーラムが存在します。同じ志を持つ仲間からの価値あるフィードバックループにより、自分を磨き続けることができるでしょう。
計画的な訓練を実施する
計画的訓練は、スキル全体を構成するのに必要な、細かいサブスキルに集中する練習法で、最も効率的な学習法であるともいう人もいます。
当然、計画的訓練はラクではありません。
研究によると、スポーツ選手であれ、作家であれ、音楽家であれ、エリートであるほど計画的訓練のために必要な集中力を維持できる時間が短い傾向があるそうです。
しかし彼らは、非常に細かなスキルやサブスキルに集中できるため、向上し続けることができ、その分野でのトップに上り詰めることができるのです。
このスキルでの集中力が落ちたら、違うスキルに移り練習することで再び集中することができます。
体を使う練習なら休憩は必要ですが、頭脳だけの場合はサブスキルを変えていくことで集中力が維持できるため効率的なトレーニングを可能にします。
教える側になる
教えることで学ぶというアイデア自体は、なんら新しいものではありません。
しかしNational Training Laboratoriesは、このアイデアについて研究を重ねることで、ラーニング・ピラミッドを発表しました。
この図からもわかるように、受け身の学習は定着率が低いです。しかし、大人になってからスキルを習得しようとするとき、多くの人がこの方法に頼っているのではないでしょうか。
「体験による練習」(定着率75%)は、計画的訓練を意味します。そして、無視できないのが、「他者に教える」(定着率90%)です。
ここでは、熟練であるか素人であるかは問題ではありません。専門家であれば、教えることはたくさんあるでしょう。
素人なら、自分が学んだことを文章に残したり、他者に説明したりすればいいのです。
指導者になるためには、その分野を完全に理解しなければ、自分の知識を誰かに伝えることはできません。
そのことがモチベーションや責任感につながり、その分野を本当に理解できるようになります。
最もシンプルな手法はブログに書き残すこと。日々の発見、手法、結果を綴ってみましょう。
練習内容に注目して、フィードバックループを導入し、計画的訓練を心がけ、学習方法に指導の側面を組み入れる。
それだけで1万時間よりもずっと短い時間でも、たいていのスキルを熟練できるのです。
最初のうちは大変かもしれませんが、ある程度プランができてくれば、あとは3か月ほど続けるだけで自動的な行動になれば努力という意識は減らせるでしょう。